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【民法改正対応シリーズvol.1】不動産賃貸借契約と保証人

2017年6月2日に改正民法(民法の一部を改正する法律)が公布されました。
2020年4月1日から施行されることも決定しました。

 

【民法改正対応シリーズvol.1】不動産賃貸借契約と保証人

 

1 内容


改正民法では
個人根保証契約には極度額を設定しなければならない、
ことが定められました(465条の2以下)。

 

2 用語の説明(根保証、極度額)


個人根保証契約というのは、条文では、"一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約のこと"と説明されています。
例えば、賃貸借の保証人のように、滞納賃料もあれば、壁を壊してしまったことの賠償債務、またそれらの利息等、不特定な債務を保証することを内容としている場合のことをいいます。

極度額というのは、保証の対象となる上限金額です。
例えば、賃貸借契約でいえば、保証の対象となるのは、滞納賃料や原状回復費用その他の元本、及びそれらに対する利息・遅延損害金等が含まれるわけですが、そうした種々の債務の一切を含んで、最大限保証人が負担する可能性のある金額のことを極度額といいます。

 

3 極度額を定めない場合の効果



賃貸借契約上の債務を個人が保証する場合はこの個人根保証契約に該当することになります。

その結果、契約書上には保証人の極度額を定める必要があり、仮にこれを定めていない場合は保証契約そのものが無効になります(465条の2第2項)

 

4 適用時期について


なお、改正民法の附則21条で、施行日前の保証契約は影響を受けませんので施行日以降に締結する場合に注意をしてください。
ただし、現在の契約を改正民法施工後に更新する際には、旧法が適用されるのか、新法が適用されるのかはケースバイケースになると考えられるので専門家に相談するようにしてください。

 

5 元本確定事由


元本確定とは、保証人との関係で負担する主債務額が決まることです。
以下の事情が生じた場合には元本が確定することになりました(465の4)。

①債権者が保証人の財産について強制執行又は担保権実行を申し立てたとき

保証人が破産手続開始の決定を受けたとき

主債務者又は保証人の死亡

【留意】
①②には主債務者(賃借人)に生じた事情は含まれていません。
これは、強制執行や破産を受けるなどかなり資産状態が悪化していても、
日々の生活の本拠たる住居を守るべく、賃料だけは支払い続けて、
賃借人としての債務を確実に履行しており、賃貸借契約は問題がない場合も多いからです。

 

6 元本確定事由の実例


上記の元本確定事由が存在する結果、実際上の現場では以下のように取り扱われます。
賃貸人側としてはこれまで保証人に期待していた部分がカバーできない恐れもありますので注意が必要です。

(賃借人が死亡した場合)

死亡までの滞納賃料 → 相続人・連帯保証人のいずれにも請求可
死亡後の滞納賃料  → 相続人にのみ請求可
原状回復費用    → 相続人にのみ請求可
賃借人死亡後に相続人の不始末で損壊させた場合 →相続人にのみ請求


7 契約書・契約締結過程によるトラブル回避


当事務所では、個々のオーナー様の要望に合わせて、改正民法に対応して、
リスクと不利益を最小限にするための契約書をオーダーメイドで作成いたします。

みなと神戸法律事務所
代表弁護士 向井 大輔